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スーザン・ソンタグの小説「火山に恋して」の翻訳が出た(みすず書房刊)。アメリカ有数の批評家であるソンタグは、かねてから小説も書いていたが、かつての小説が前衛的な手法で書かれていたのに対し、92年に出たこの作品は、一見、古典的な題材を古典的な手法で描いている。18世紀から19世紀にかけて英国公使としてナポリに滞在し、ヴェスヴィオ火山の研究に熱中したハミルトン卿を中心に、その若き奥方とネルソン提督を交えた一種の三角関係が、カラフルな風土や複雑な人模様を背景として、ゴージャスな絵巻物のように、しかし悠揚迫らぬ筆使いで描かれてゆくのだ。だが、火山の噴火というのは、革命と動乱のメタファーでもあり、サド侯爵の描いたような性的アナーキーのメタファーでもある。近代初頭のそうした激動を、たんなる歴史小説としてではなく、いわば火山学者が火山岩の標本を集めてコラージュするように描き出すというのが、ここでのソンタグの試みだったのではないか。その試みは成功し、ともかく読んで面白い、しかもきわめて重層的なテクストが出来上がったのだった。私はこの小説を刊行直後にイタリアで読んだ。今回ひさしぶりに日本語で読み返してみたが、富山太佳夫の翻訳は正確で読みやすく、書簡や回想の部分の文体の変化もうまく伝えている。ただ、原著にはペーパーバック版でさえ当時の火山岩の標本の絵が随所に挟まれて独特の雰囲気を醸し出している、日本語版でそれを全部はぶいてしまったのはなんとも残念だった。なお、ソンタグはこのあと去年も「アメリカで」という小説(ユートピア建設を目指して新大陸に渡ったポーランドの女優一行の話)を書いて全米図書賞を獲得している。また、去る5月9日にはエルサレム賞も受賞したが、その受賞式でイスラエルのパレスチナに対する強硬姿勢を批判してみせたあたりは、いかにも硬派の知識人らしいと言うべきだろう。これからの活躍がますます期待される。 |
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