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まさにコロンブスの卵と言うべきだろう。菊地信義の装丁した福永信の小説集「アクロバット前夜」(リトル・モア刊)のことだ。なにしろ、徹底した横組みが採用され、1頁の目次のあと、2頁の1行目はそのまま3頁の1行目へ、さらに4頁の1行目へと、どこまでも横へ横へ続いてゆくのである。読者はどんどん頁を繰りながら話の筋を追っていかなければならない。そして、121頁の1行目を読み終えたところで、2頁の2行目に戻る……。そうして読み進むうちにも、頁の下の方にちらちらと見えるさまざまな言葉が妙に気になって、どんどん先へ先へ引っ張られてゆくのだ。福永信の小説そのものは、いわば阿部和重の小説を単純化したようなもの――戦場としての学校で展開される小中学生のノンセンスなサヴァイヴァル・ゲームといったところで、一度読んでしまえばとくに読み返す気にもならない(だが、逆に言えば、阿部和重の小説がそれをいたずらに複雑化しただけのものではないと言い切れるだろうか)。それでいいのだ。ともかくこの本は、121頁を26〜27回にわたって走り抜けるためにある。頁を繰る速さで小説の速度を図るとすれば、これはおそらく世界最速の小説と言えるのではないか。 |
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