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ブレット・イーストン・エリスの話題作をメアリー・ハロンが映画化した「アメリカン・サイコ」は、80年代のニューヨークの表と裏を描いた素敵に悪趣味な作品だ。バブル社会の先端を行く主人公は、絵に描いたようなカタログ野郎。マニュアル通りにシェイプ・アップした体に最新流行のスーツを着こなし、最新流行のレストランで食事する。アパートの純白の壁にはロバート・ロンゴの絵をかけ、セックスの最中でさえBGMに関する蘊蓄を傾けてやまない。会社で仲間と名刺の紙質や書体を競い合うところなどは、なかなか笑える。だが、そのような彼の内面は空虚そのものであり、昼のブランド競争で溜まったストレスは、突如、夜の連続殺人という形で噴出するのである。アルマーニのスーツがズラッと並んでいたウォークイン・クローゼットに、やがて死体がズラッと並ぶことになるだろう。ヒッチコックの「サイコ」には図式的とはいえ主人公を殺人に追いやる心理学的な契機があったが、「アメリカン・サイコ」にもはやそのような契機はない。とことん表層化された世界において、深さのない昼と夜が無根拠に交替するばかりなのだ。けっしてすぐれた映画とは言わない。だが、現在につながるポストモダン消費社会が表面化した80年代の空虚な華やぎが、辛辣なパロディ意識と洗練されたスタイル感覚をもって描き出されていることは確かだ。映像から音楽にいたるまで、あの80年代を追体験してみようという向きには、ぜひ。 |
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