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高橋源一郎のレスは、あまりにも愚劣かつ恥知らずである/スガ秀実
 高橋源一郎のレスポンススガ秀実氏の批判に」を読んで、あきれてしまった。私は「文は人なり」の格言を信じる者ではないが、かかる文章を読むと高橋氏の人格さえ疑わしいものに思えてくる。私見によれば、以下の私の批判が妥当しないとすれば、高橋氏はすでにアルツハイマー病におちいっていると見なさなければならないが、だとすれば、高橋氏は一刻も早く筆を折って(コンピューターを捨てて)、病院にでも行くべきである。これは、高橋氏にとって、かの「原宿の大患」以上の危機なのではあるまいか。
 以下の文章は、高橋氏がアルツではないことを前提に書かれている。

 高橋氏は私の最初の批判に対して「陳謝」しているかに見える。その「陳謝」の理由は、「批評空間」二号での拙著への書評が「書評として」の「公平を欠いている」からだという。しかし、私が指摘しているのは、高橋氏の文章の全き虚偽性なのだから、この「陳謝」からして、すでにセコい弁解にすぎない。
 さらにその後、高橋氏は次のように言う。――私による、漱石が「大逆」事件について「ほぼ明確に」論じているという主張は、拙著『「帝国」の文学』を高橋氏が読んで「批評空間」に書評を書いた時点においては、「いくつも証拠が提示されているとはいえ、わたしにとっては魅力的で刺激的だが、有力な仮説の一つにすぎない、というものでした」、と。高橋氏は、私の説が「仮説」程度のものだから書評では無視しちゃったんだ、と言いたいらしいのである。よく言うよと思うが、まあよかろう。
 ところが、である。「しかし、その後、千葉大での講義に際し、漱石の『思ひ出す事など』を全編、発表年月日を調べた上で、順に並べ、『大逆』事件の年表と比較しながら、読んでいくと、驚くべきことがわかりました」と高橋氏は言い、私の説は「仮説ではなく、間違いない」と思ったと記すのである。
 高橋氏のレスのみを読み、拙著を読んでいない読者は、あたかも私の「仮説」を、高橋氏が有難くも実証してくれたかのように思うはずである。しかし、「漱石の『思ひ出す事など』を全編、発表年月日を調べた上で、順に並べ、『大逆』事件の年表と比較しながら、読んでいく」という作業は、すでに拙著で行っているのであり、端的かつ詳細に記していることだ(拙著276頁〜296頁)。すでに拙著を読んでいるはずの高橋氏に、あたかも新発見のごとく「驚くべきことがわかりました」、「間違いない」などと言われる筋合いは、まったくない。ボケてみせることが「芸」だなどと思っているなら大間違い、これが恥知らずな詐術でなくて何であろう。俚諺を用いれば、「盗人猛々しい」というのである(高橋氏のレスは「猛々しさ」を排して慇懃無礼をよそおっているが、その「無礼」は実は「猛々しさ」以上のものではないか)。
 漱石と「大逆」についての高橋氏の「講義」に接した千葉大の学生は、こんなことを黙って聞いていたのであろうか(調べてみたいものである)。だとすれば、彼らは(不勉強にも?)拙著を参照していないのであろう。私の教えている早稲田と近畿大の学生は、私の周辺にいるというバイアスがかかっているにしろ、高橋氏の「批評空間」の書評の嘘とチンタラぶりにあきれ、先のレスには激怒さえしておりましたよ。閑話休題。
 「仮説」を実証したと称する高橋氏は、さらに、「だが、と、わたしは考えます」と言って、あれやこれやと書いているが、一々引用する煩に耐えない。そのこともすでに拙著に記されていることをヌルく言い換えているだけだからである。
 一つだけ、大事な点を挙げよう。高橋氏は、「漱石が『国民作家』になったのは、彼が重要なことはすべて、直接には書かず、つまりさまざまな解釈が可能な状態にしておいたからではなかったか」と「書評執筆後に考えるようになりました」と言う。同様のことは、すでに拙著に書いているが(拙著263頁〜276頁)、それはともかく、そう考えたとしたら、高橋氏の『日本文学盛衰史』は、少なくとも、その漱石把握において誤りであり、「自己批判」が必須だということを自覚すべきであろう(私は未だに「全共闘」であり、高橋氏のように「転向」しておりませんからね)。高橋氏は、そこで、「大逆」事件をめぐる漱石を、良心的な国民作家として温存しようと、「転向文学者」にふさわしく、いじらしくも腐心しているからである。
 いやはや、何とも。しかし、私は高橋氏の書評やレスが、今日、特異な例だとは考えない。これは、今日の「日本文学」の、「盛」ならぬ「衰」を象徴する愚劣さである。いうまでもなく、私のこの高橋氏への批判は、『日本文学盛衰史』にあられもないオマージュ――それは、そこにおける高橋氏の、漱石と「大逆」事件に関するトンチンカンな「仮説」にかかわったものだ――を捧げていた、多くの者に対しても向けられている。

※ この論文には以下のレスポンスが付いています。
▼ 高橋源一郎〈「大逆」と明治〉へスガ秀実(2002/01/17)
 ▼ Re: スガ秀実氏の批判に/高橋源一郎(2002/01/24)
  △ Re: 高橋源一郎のレスは、あまりにも...スガ秀実(2002/01/28)

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