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500万人もの参加を得て、カリキュラムの改善や教員の増加を求めて展開された高校生たちの運動が落ちつくまもなく、11月に入ったフランスでは国会でのPacsをめぐる議論に内政の関心が集中している。 |
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Pacs――パクス」と発音されるこの言葉は、Pacte civile de la solidarite
の略称で、「連帯の市民契約」を意味する。社会党から提出されたこの法案は、同性愛者を筆頭に、異性愛の同棲者や性的関係を結ばない兄弟姉妹など、結婚という関係の外で共同生活を営む様々なカップルに、財産や負債の共有、パートナーの死去の際の遺産の継承、税の控除などの経済的な便宜に対する権利を与えることを狙いとしている。それが大きな話題を呼んでいるのは、なんと言っても、このあらたな「契約」が、これまで異性愛のカップルに限られてきた法的な認知を同性愛者にまで拡大するものだからだ。 |
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この法案は、エイズの流行によって顕著になった同性愛者のカップルの経済的な不安定のための対応策として、90年代初めから懸案とされてきたが、今回の提出に際して急遽異性愛者や兄弟姉妹にまで射程を広げたために、法案を支持する社会党、共産党、緑の党など左翼与党の間でも必ずしも見解は一致していない。共和国連合、民主連合など右翼野党が指摘するように、拙速ゆえに法律上の問題含みであることがその足並みの乱れの一因のようだ。だが、Pacsをめぐる議論が、「パクス」という言葉の響きに似あわぬ騒々しいメディア戦の対象となったのは、この「契約」を「ノーマル」で「神聖」な結婚や家族制度への挑戦として受け取るカトリック系の野党代議士たちの猛反発による。 |
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たとえば、野党のある女性代議士は演説中にバイブルを振りかざし、社会党の提案者に向かって「カワイイ男ね!」などと口走ったし、野党の代議士を先頭に、カトリック諸団体から極右国民戦線まで糾合して行われた反Pacsのデモは、様々な状態にあるカップルの経済的な契約にとどまる今回の法案を「ホモの結婚」、「家族の偽造」と決めつけていた。普遍的人権と共和国の非宗教性を根本原則とするフランスにおいては、政治論争において市民個々の選択に価値の序列をつけることも、宗教的なレフェランスを持ち出すこともタブーなのだが、今回の件に関しては、そのタブーはたやすく破られてしまったようだ。 |
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むろん、彼ら「守旧派」のホモフォビーは、ある種の症候として全く根拠を持たないわけではない。ひとたび同性愛のカップルが法的な身分を獲得することになれば、不妊に悩む夫婦には認められている養子縁組や人工受精による生殖が、同性愛者のカップルにはなぜ認められないのか、という議論は当然起こりうる。それはいくつかの同性愛者の団体の要求でもあるし、また現にオランダでは、来年の1月に同趣旨の法律が採択される予定となっている。同性の両親を持つ家族のなかで育った子供が公的な認知を受ける日も決して遠いことではないだろう。そしてもし、同性愛をはじめとする様々な性愛の関係が、法制化されて社会の再生産のサイクルの中に組み込まれることになれば、これまで主体の構成や欲望のあり方の読解格子として、またその社会的規範として機能してきた父−母−子のエディプス的三角形のメタファーとは完全に縁を切ってしまわなければならないような事態が到来することだろう。他方で、医学的な技術の進歩が遺伝子操作による生殖さえ想像可能にしていることを考えあわせれば、そこでは個人の同一性までもが容易にはとらえがたくなるかもしれない。その未聞の場所で、性愛の関係が一体いかなるかたちを取ることになるのか、いや何らかのかたちさえとりうるのか――Pacs
をめぐる論戦は、「進歩派」と「守旧派」の対立の向こうに、われわれが立たされている不気味な地点をふとかいま見せるのだ。 |
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