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数年前、ロンドンのヘイワード・ギャラリーで、映画にインスパイアされた現代美術の展覧会を見た。ピーター・グリーナウェイの大規模なインスタレーションをはじめ、なかなかの力作揃いだったが、その中でも異彩を放っていたのが、ダグラス・ゴードンの「24時間サイコ」(1993年)である。文字通りアルフレッド・ヒッチコックの「サイコ」をスローで24時間かけて上映し、観客は床に寝転がってそれを観るのだ。そこでは、ヒッチコック独特の緊迫したサスペンスは無効化され、替りに、物語から解放された映像そのものの魅力が観客をとらえる。弛緩と魅惑が一つになった、それは実に不思議な体験だった。そもそも、この展覧会全体が「スペルバウンド」(ヒッチコックの「白い恐怖」の原題)と題されていたことからもわかるように、映画のなかでもヒッチコックの作品はアーティストにとっても特別な魅力を持っているようだ。現在も、東京オペラシティアートギャラリーで、「汚名」と題して、ヒッチコックと現代美術をテーマとする展覧会が開かれている。フロイト的な分析に基づいた映像構成を見せるヴィクター・バーギンの作品から、「めまい」のサウンドトラックに基づく音のコラージュを聞かせるクリスチャン・マークレーの作品まで、実に多様な作品群。そこにはもちろん「24時間サイコ」も欠けてはいない。あなたはそこで、運良くあの伝説的なシャワーと殺人のシーンに遭遇することができるだろうか。 |
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