Critical Space Archive

ダンサー・イン・ザ・ダーク
 1984年のカンヌ映画祭でデビューした二人の若い監督。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」のジム・ジャームッシュは、センスのいい、しかし結局はどうでもいい映画を、「エレメント・オブ・クライム」のラース・フォン・トリアーは、癖があって好きになれない、しかしどうしても気になる映画を撮りつづけるだろうと思わせた。その予想は見事に的中した。ラース・フォン・トリアーの新作「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は、好き嫌いで言えば大嫌いな映画であると同時に、批評的に言えば2000年のカンヌ映画祭で最高賞を獲得したのも当然と思える力作である。デンマークの伝統で言えば、アンデルセンの童話を思わせるような、虐げられて、虐げられて、それでも純粋さを失わない魂の物語。ビョルクの演ずるその主人公は、ちょっとした物音から音楽を想像し、その想像の世界に逃げ込むことで、なんとか悲惨な生活に押しつぶされずに生き延びている。こうして、手持ちキャメラで撮ったドキュメンタリー風の映画がとつぜん100台のキャメラによる手の込んだミュージカル映画と化し、騒音に満ちた工場がそのままゴージャスな舞台となって、ビョルクやドヌーヴ(ビョルクの姉貴分を演ずる)が歌い踊ることになるのだ。なんとメチャクチャな! しかし、考えてみれば、これは現代の世界にあってミュージカルという馬鹿げた形式に意味を持たせる唯一の方法だったのかもしれない。繰り返すが、いかにも北欧的というほかないこの重苦しい物語を、私はどうしても好きになれない。だが、この映画が驚くべき力作であることは、否定しがたい事実なのだ。なお、前作「イディオッツ」も、新作にも増していやらしくも大胆な問題作である。来る3月に日本公開が予定されているので、たぶんまたその折りに。

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