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リービ英雄とその妹インドラ・リービの往復書簡/インドラ・リービ
英雄兄さん(from NewYork)
 明けましておめでとうごさいます。先日電話で話した折、元気な声を聞き嬉しく思いました。
 いつもなら、ニューヨークで会ってじっくりと話し込むのが「Autumn in New York」をかざる楽しみになっていましたが、去年は9月11日にケネディ空港に着く予定だった飛行機が、カナダにリダイレクトされたまま、ついに会えませんでしたね。ニュースでは、ニューファンドランドの方で、ホテルの客室が不足のため、着陸したまま17時間も飛行機の中に押し込められた乗客の話が流れ、禁煙恐怖症の激しい兄さんがもしもその中にいたなら、と大いに心配していましたので(笑)、バンクーバーのホテルから電話がかかってきた時、やっと居場所がわかってほっとしたものでした。
 深い悲しみと緊張感とあの黒い煙に覆われ、外から訪れてくるのは救出隊員と兵隊と政治家ばかり、空を飛ぶのは主に空軍のF16、という思いがけないニューヨークの有様を、兄さんの愛するニューヨークであればこそ、自分の目で見て肌で感じずに済んだのは何よりでした。
 このごろはすっかり元に戻った、とはいえないまでも、グラウンドゼロから発するいやな臭いがやっと消え、兵隊の数も減り、ニューヨーカーの神経も80年代並みくらいにまで和らいできたので(笑)、せめては異様な「戦争地帯」の雰囲気が抜けたと言えましょう。
 9月11日以来、こちらではニュースといえるようなニュースがどんどん減って、国内の情勢も海外の情勢もさらに把握しにくくなってきました。国内では、ブッシュ大統領の空前の支持率が紛れもない「事実」として度々話題にされるのみで、いわゆる反テロ戦争の具体的な運び方や今後の政府の方針については事実よりも無根拠に思える当て推量の方が優先されています。アフガニスタンからの報道はさらにひどく、空襲で被害を受けているアフガニスタンの民間人の話は皆無に近い反面、アメリカの記者がアフガニスタンで剃刀を買えなかったり、砂埃に困ったり、云々となさけない苦労談が繰り広げられたりして、アメリカの報道機関の悪質加減には呆れるばかりです。
 こんな状況なので、日本のことなどは平常よりもさらに気にされず、報道されないのは、兄さんならすぐに感じ取るところでしょう。平常なら、アメリカのニュースに頼らず、インターネットで日本語の新聞をあさったり、ケーブルテレビで時々日本語のニュースを見たりするものですが、尋常ではないこのごろは日常の神経疲れとニュース疲れにまけて、日本の現状にはまったくうとくなってしまいました。
 長年の東京暮らしと毎年の東京行きもあって、ここ数年、遠いニューヨークに住んでいてもさほどの距離感を覚えず、個人的には東京とニューヨークとが一つの世界を成していたほどです。が、9月11日以来というものは、世界一大きい島国の中の島都市に住んでいることだけで、空間的な距離とは別の意味の隔絶を、ニューヨークの外のアメリカに対しても、よく「島国」の典型のように言われてきた日本に対しても感じるようになりました。困窮きわまるアフガニスタンの洞窟と富国強兵の米国の聳える楼閣とが曲がりくねった形で結ばれてしまったように、実際には世界は一つになりつつあるように思えるのですが、感覚的にはそれを実感できないばかりか、ニューヨークと東京でさえまったく別々の世界のように感じてしまいます。
 そこで、9月11日以来、東京でどんなふうに今の情勢を見てきたのか、どんな言説の中でものを考えているのか、もっと大雑把にいえばそちらの現状について、教えてもらいたいのです。そうしてもらえたなら、ただの報道機関ではのぞめない、東京を垣間見る窓が開いて、きっと東京からの隔絶感が再び親近感に変わることでしょう。
 年が改まっても不安な情勢が続きそうですが、とにかく2002年が兄さんにとってよい年になりますように、そしてまた近いうちにニューヨークでじっくりと話ができるようにお祈りしています。
 では、お返事を心よりお待ちしています。
インドラより 

※ この論文には以下のレスポンスが付いています。

 △ リービ英雄とその妹インドラ・リービの往復書簡/インドラ・リービ(2002/01/18)
  ▼ Re: 妹インドラへ/リービ英雄(2002/02/02)


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