 |
2月18日、バルチュスが92歳で死んだ。リルケやジッドの薫陶を受けて育ち、ルネサンスの巨匠たちからクールベに至るヨーロッパ絵画の伝統を深く継承した、最後の大画家。だが、だれもが口にするこの呼び方には、いささか違和感がある。きわどい姿の少女を奇妙に稚拙なタッチで描いた初期の絵画などを見ると、巨匠というよりほとんど変態画家といったほうがいいくらいなのだ。実際、彼はそういう個人的なオブセッションを生涯にわたってキャンヴァスに投影し続けただけではないのか。そのオブセッションこそが、あれらの大画面の否定しがたい迫力の源泉だったのではないのか。そんなバルチュスが、西洋絵画の写実的伝統を継承する最後の巨匠として惜しまれるというのは、歴史の皮肉と言うべきだろう。考えてみると、バルチュスことバルタザール・クロソウスキー・ド・ローラの兄であるピエール・クロソウスキーはまだ健在である。バタイユらと深い交友関係にあったあの哲学者兼作家も、老年になってから色鉛筆をとり、特異なオブセッション(縛られた妻、襲われる美少年etc.)を、奇妙に稚拙なタッチで描き続けてきたのだった。あえて変態兄弟と呼んでおきたい彼らの作品は、21世紀にも不可解な謎として受け継がれ、不可思議な魅力を放ち続けるだろう。 |
|
|