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批評空間は、有志(組合員)の出資によって設立された有限責任の投資組合(正式名称:批評空間投資事業有限責任組合)と、同組合からの投資を主な資本として設立され、協同経営方式で運営される株式会社 批評空間という2つの組織によって構成されています。 |
組織形態の理念: |
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批評空間は出版事業の立ち上げに際し、生産協同組合を組織モデルとしました。生産協同組合の組織形態に関して端的に述べると、生産にかかわる者が皆で出資して生産組織(組合)を立ち上げ、組合内においては各人がその出資額にかかわりなく、平等な経営議決権をもって、組合事業を運営していくというのが特徴です。それは、歴史的には資本制下の会社組織に対抗する生産組織として出現しています。いわば、会社が労働者を利潤獲得のための手段として扱うのに対して、生産協同組合においては他者(労働者)を「手段としてのみならず、目的(自由な主体)として扱う」(カント)ことを目指しているといえます。批評空間はこの点を自身の組織選択における理念としました。
もっとも、生産協同組合がズバリ法律の規定で明文化されているわけではありません。例えば、「生協(消費生活協同組合)」は、法律によると消費者が主として商品の共同購入をするための組合であって、生産協同組合というよりは、むしろ消費協同組合に分類されるものです。
また、法律が定める生産者の協同組合としては、中小企業等協同組合法に規定されている「事業協同組合」がよく知られています。これは、大企業との競争力において劣る中小企業が組合を作って結集し、原材料や生産手段などを共同購入することで、スケールメリットを実現したり、業界の意見を取りまとめて、行政府に業界保護を訴える役割を果たすものです。しかし、われわれが考える生産協同組合は、業界を代表する組織ではなく、生産者同士の自由で平等なアソシエーションを目指すものですから、この「事業協同組合」とは異なります。 |
現行の法制下での検討作業: |
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上記の理念を背景として、生産者の協同出資による生産組織の設立に際して、以下の二つの要件を念頭において、具体的な検討作業に入りました。 |
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(1) |
組織の内的な面における自由平等:
生産者たちは、組合への出資額の多少に拘らず、組合の運営について全て平等な議決権を有すること(一人一票の議決権)。 |
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(2) |
組織の外的な面における自由平等:
生産者が協同して生産組織を設立するに際して、生産に従事しない出資者に対し、自らの運営決定権を失うことで彼らの支配の下に置かれるようなことがないこと。 |
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そこでこの2つの問題を具体的に考えるためには、組織を立ち上げるに際して、いかなる規模の資金を必要とするのかを検討することがポイントとなります。 |
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a. |
もし、必要とする資金が協同の生産者同士だけでまかなえる場合:
この場合、上の(2)の問題、対外的な独立の問題を考える必要がありませんから、(1)の問題だけを考えていれば足りるので、そう難しい問題はありません。もっぱら対内的な自由・平等を確保するために、民法上の組合や中小企業等協同組合法の企業組合などの良し悪しを検討すればよい。 |
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b. |
資金が協同の生産者同士だけではまかなえず、外部の人たちからの資金調達を必要とする場合:
この場合には、まさに上の(1)と(2)の両方の問題を考えなくてはなりません。そして、今回の批評空間のケースがこれでした。この場合、厄介なのが(2)の問題、対外的な独立の問題でした。 |
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I. この点、最も古典的な解決方法が、金融機関からの融資ですが、この場合には、通常、生産者の個人財産を担保に提供させられたり、毎月の返済に追われて自転車操業を強いられるというまさに「他者を手段としてのみ扱う」関係に追い込まれます。 |
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II. これに対し、返済しなくても済む便利な資金調達の方法として株式の発行(株式会社の設立)というものがありますが、しかし、これは第三者に株式を購入してもらう代りに、その第三者が会社の共同所有者になることを認めることであり、そのため、協同生産者は自らの運営決定権を失う危険があります。 |
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III. また、映画や音楽では、作品制作に対し、映画会社やテレビ局や広告代理店などから出資を受けるというやり方がありますが、しかし、通常、その作品の著作権は全て出資者の手に渡り、たとえ作品が大ヒットしても、制作者たちの元には利益が何も還元されないという扱いを受けます。つまり、この場合、協同生産者は、形式上自らの運営決定権は持っていますが、出資の結果、生産物である作品に対する自らの支配権を失ってしまうのです。 |
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そこで、融資(出資)は受けられるが、そのために、協同生産者は日々返済に追われることもない、また自らの運営決定権を失うこともない、或いは作品に対する支配権(著作権)を失うこともないという方法を見出す必要がありました。 |
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IV. さらに、出資者側の事情として、次のことを考えておく必要がありました。今回、批評空間に出資してくれた人たちというのは、生産協同組合としての批評空間を応援してくれる人たちですので、出資者としての彼らの責任を、無限責任(単に出資額にとどまらず、その個人の全財産が団体の債務の弁済にあてられる)まで負うような危険な目にあわせることはできず、あくまでも出資額の限度でしか責任を負わない(有限責任)で済むようにする必要がありました。 |
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現行法の下で、以上の要請を全て満たす法的な制度があるのだろうか。これが批評空間が直面し解決しなければならない課題でした。
解決のカギは「投資」にありました。つまり、カギは「(生産者の運営決定権を失う)投資」にはなく、同時に「(生産者の運営決定権を失わない)投資」にしかなかったのです。それは、批評空間が批評空間に投資すること、つまり、批評空間に投資するための組織(有限投資組合)を批評空間自らのイニシアチブで作り上げることによってのみ可能でした。しかも、幸いなことに、この投資組合への出資者の責任が有限責任に限定されるという新しい法律(中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律)が98年に施行されたのです。これで「の問題も解決しました。
そこで、以上のプランに沿って考え出されたのが、批評空間のイニシアチブで作り上げられ、出資者には有限の責任しか負わせない批評空間投資事業有限責任組合というものでした。 |
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しかし、ここでまた私たちは、現行法の障害に直面しました。それは、この有限投資組合の投資先として法律で認められているのは、原則として中小企業の株式会社に限られ(有限会社や上場企業も対象外)、組合(民法上の組合や企業組合)ではダメだということでした。資金調達の問題を解決したとたん今度は、当の生産組織を組合にすることができない、という問題に直面したのです。生産組織を株式会社にせざるを得ないことになったため、再び、上述の(1)の問題、組織の内的な面における自由平等の問題をどう解決するか、ということが課題となったのです。
具体的にいうと、生産組織を立ち上げたいと望んでいる生産者たちは、生産組織としては組合ではなく株式会社を設立するわけですから、自らその株式会社の協同経営者、つまり株式会社の株主となります。そうなると、法律(商法)における所有株式数を基にした多数決原理により、彼らの間で、株式会社への出資額の多少に応じて、発言権の優劣が生じることになります。これが(1)の課題にそぐわないのは明らかです。従って、生産組織として株式会社という制度を単にそのまま採用したのでは、私たちの本来の理念である生産協同組合方式が絵に描いた餅になってしまいます。 |
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そこで、株式会社の組織形態を採用しながらも、組織の内的な面において生産者の自由平等を確保する方法はあるのだろうか。これが次に解決しなければならない課題でした。
解決のカギは、平等(多数決原理)でした。つまり、カギは「(所有株式の数に応じた)平等」にはなく、同時に「(一人一票の)平等」にしかなかったのです。それは、強制的に同じ数だけの株式を各生産者に割り当てることにより、所有株式の数に応じた平等でありながら、一人一票の平等を実現してしまうことでした。そして、各生産者は自身が出資しようと望んでいる総額の残額を有限投資組合に出資することで、その差異が生産者同士の経営に対する発言権に何ら差異をもたらさないという形を考えたのです。具体的にいうと、5名の生産者が共同経営による生産組織を考えており、仮に彼らがそれぞれ、100万円、150万円、200万円、250万円、300万円の出資を希望している場合、各人は会社への直接出資は均等に50万円として、直接出資の株式を同数(例えば5株)にすることで、発言権の平等を確保し、残りのそれぞれ50万円、100万円、150万円、200万円、250万円は、有限投資組合に出資するのです。こうして、一人あたりの総出資額の多少が、生産組織内部の発言権の差異となることを避けた。こうした方法を採用したことにより、株式会社の形態であっても、生産協同組合における構成員の内的な平等を実現することができたと考えています。 |
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以上のようにして、一方では批評空間主導の有限投資組合を設立し、そこに、5人の生産者全員の出資金のうち各自5株分を引いた残額と有志の人たちの出資金全額を出資し、他方で5人の生産者全員が発起人になって同数(5株)の株式を引き受けて株式会社を設立し、発起人である生産者以外からは上記の有限投資組合が唯一の株式引受人となることにより、(1)と(2)の両方の問題を解決したのです。つまり、このような批評空間投資組合と株式会社批評空間の総体を、われわれは批評空間と考えているのです。
とはいえ、これは様々な法律上の制約の下で強いられ考案せざるを得なかった暫定的な解決策であり、そのアソシエーションのプログラムをまだ完全に手にしているわけではありません。しかし、これから、その運用において、これまでの法的な限界を乗り越えて、生産協同組合の理念により近づいていく努力を続けていきたいと思っています。 |
組合の種類: |
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最後に、参考までに、今回利用した有限投資組合、現行法上、生産協同組合的な組織として代表的な民法上の組合と企業組合について簡単な解説を紹介しておきます。 |
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1. |
有限投資組合
有限投資組合は1998年に施行された法律(中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律)で制定された新しいタイプの投資のための組合です。この有限投資組合の基本事業は、組合員からの出資金を組合の共有資産として運用し、投資先として株式会社のうち法律で中小企業に分類される企業(有限会社や上場企業は除外される)に投資することで、その投下資本とその配当金の回収を主な目的としています。具体的に言うと、中小企業の発行する株式(設立に際して発行される株式も含む)や転換社債(後に株式に転換する社債)の保有、またその企業が所有する工業所有権や著作権の保有です。さらに、これらの事業に付随して、投資先企業の経営や技術指導を行う権利を有します。しかし、金融機関が行うような融資業務(資金を貸し付け、その資金と利子を回収する業務)は認められていません。
この法律の制定の背景には、次のような認識があるようです。現在の経済社会を牽引するのは必ずしも大企業ではなく、むしろ時代に対応した身軽な中小のベンチャー企業であり、そのような中小企業に潤沢な資金を提供することが必要である。有限投資組合はそのために制定された組合であると考えられます。その意味では、この投資組合は組合という名称はついていますが、生産組織となりうる組合ではなく、また、本来はより資本主義的色彩の強い組織です。 |
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設立要件:
有限投資組合の設立には4名以上の組合員が必要で、うち最低1名以上が無限責任組合員となる必要があります。組合員には有限責任組合員と無限責任組合員があり、原則として全ての組合員に業務執行権がある民法の組合とは異なり、無限責任組合員のみに業務執行権があります。それゆえ、批評空間が有限投資組合のイニシアチブを握るというのは、批評空間の経営者が同時に有限投資組合の無限責任組合員になるということです。
また、仮に組合が多額の負債を負って解散するような場合(会社で言う倒産)、有限責任組合員の責任は最大でもその出資金が返還されないという範囲に留まりますが(有限責任)、無限責任組合員は出資金で返済が完了しない場合、個人の財産をもって返済する責任を有します(無限責任)。なお、組合員となるに際して、特に必要とされる資格はなく、個人でも法人でも組合員となる資格を有します。
設立要件について更に詳しく知りたい方は『投資事業有限責任組合法』(通産省中小企業庁振興課編、通商産業調査会出版部、1998年、3900円)をご覧下さい。 |
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2. |
民法上の組合
組合員となるにあたってとくに必要とされる要件はなく、誰でも契約で定められた一定額の出資をすることで組合員となることができます。また、組合員の議決権も出資額にかかわらず、各組合員に平等に保障されています。しかし、議決権が平等に認められているのと同様、組合に対する組合員の責任も平等に連帯責任である、というのが組合組織の基本になっています。すなわち、組合がその事業において仮に多額の債務(借金)を負った場合、その債務を組合員全員が連帯して返済しなければならない、という連帯無限責任の原則が適応されます。要するに、会社組織のような有限責任が認められていないために、組合員には常に経済的な不安を強いることになる。その意味で、本来出資もし経営にも責任をもって参加する協同生産者の立場の人ならまだしも、単に出資をするだけで基本的に経営にはタッチしない資金援助者に人にとって、この組織は過剰なリスクを負わせるもので、適切なものではありません。 |
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3. |
企業組合
この組合は中小企業等協同組合法のなかで認められている組合のなかでも特殊な組合で、組合の営利事業に関してもほぼ制約がありません。また、上記の任意組合と異なり、組合員の有限責任が認められています。有限責任とは、組合の債務に関し、組合員が個人として責任を負うのは自身の出資額の範囲内に限定される、ということで、最大でも出資金が返還されないという範囲に留まるということです。
しかし、企業組合においては組合員となるにさいしての制約があります。組合員の大多数が組合の協同者でなければならない(例えば大学の教師をやりながら企業組合の組合員になることは認められない)。この制約のため、多数の有志に組合員となるよう呼びかけることができず、また、組合員となれない以上、彼らからの出資を期待することもできない。その意味で、企業組合は事実上、少数の者が協同的に生産に従事する、小規模な生産活動にしか向かないと思います。 |
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文責 内藤裕治・柳原敏夫 |
批評空間投資事業有限責任組合 |
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◎ 設立:2001年2月1日
◎ 組合員数:17名
◎ 有限責任組合員:浅田彰・磯崎新・いとうせいこう・岡崎乾二郎・鎌田哲哉・
柄谷行人・高祖岩三郎・坂本龍一・杉浦直行・西部忠・
東幸三・村井紀・柳原敏夫・山村武善・渡部直己 ほか
◎ 無限責任組合員:内藤裕治
◎ 組合員による総出資額:2750万円(設立時)
◎ 投資先:株式会社 批評空間/投資額:2500万円 |
株式会社 批評空間 |
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◎ 設立:2001年2月19日
◎ 発起人(協同経営者):浅田彰・柄谷行人・高祖岩三郎・杉浦直行・内藤裕治
◎ 専従者:2名
◎ 代表取締役:内藤裕治
◎ 資本金:2750万円
◎ 〒113-0033 東京都文京区本郷1-5-15 |