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山形浩生の『山形道場』(イースト・プレス)が送られてきた。世間で横行している、まわりくどく、しばしば間違った説明に対し、「要するにこういうことだろう」とズバリ突っ込む。その姿勢自体は共感できるし、情報技術時代の経済・社会・文化を横断して提示されるさまざまな論点もだいたい正論だと思う。ただ、どうしてもっとクールな書き方ができないのだろう。「オレは権威なんか無視してやるぜ」という自意識は「私は権威だ」という自意識と背中合わせであり、どちらにしても書かれたものを暑苦しくするだけだ。また、論点の中には間違ったものもある。私が『構造と力』(剄草書房)で使ったクラインの壺のモデルが間違っているという指摘はその一例だ。『構造と力』では、チューブの両端を普通にくっつけるとトーラスができ、ひねってくっつけるとクラインの壺ができるが、後者の操作は3次元空間の中では不可能だというところから説明してあって、誤解の余地はない。むしろ、山形浩生の方が、クラインの壺を3次元立体として近似的に示したモデルにとらわれて、初歩的な誤解に陥っているのではないか。実は、インターネット上ではすでにそのような指摘を読むことができる。他人の議論を誤りと決め付ける前に、そのくらいはチェックして自分の足場を固めておくべきだろう。山形浩生という道場破りは、自分で道場を開くには、もっと他流試合を重ねて腕を磨く必要があるようだ。 |